アイルランドに住む獣医ジョン・ボイド・ダンロップが世界で初めて空気入りタイヤを実用化しました。10歳になる息子のジョニーに「僕の自転車をもっと早く走れるようにして」と頼まれたのです。
実験を重ねた末、ゴムのチューブとゴムを塗ったキャンバスで空気入りタイヤを作りこれを木の円盤の周りに固定。この空気入りタイヤで走った息子は大喜び。さらに改良を重ね1888年、空気入りタイヤの特許を取得し世の中に広めました。
ダンロップは現在タイヤメーカーとしてではなくブランドとして存続。日本国内では住友ゴムが関係を築いて来ました。
1909年英国ダンロップ社の工場を日本(兵庫県神戸市)へ誘致、ゴム工場として創業。1917年ダンロップ護謨株式会社として日本法人を設立。1937年日本ダンロップ護謨株式会社と改称。
1960年住友グループ(住友電工が主体)資本参加、1963年住友ゴム工業株式会社に社名変更。これにより国内においては住友グループの経営となりました。
ダンロップと住友ゴムの関わり
住友ゴムは1984年多額の債務を抱え経営危機にあったダンロップ(英国ダンロップ社)に対し、英独仏の6工場およびタイヤ技術中央研究所を買収。1985年ダンロップ本体のタイヤ事業を買収、1986年米ダンロップをも買収しました。
1999年今度は米国グッドイヤー社と株式の相互持ち合い、タイヤ事業におけるグローバル・アライアンスを締結。これによりダンロップブランドの世界的住み分けが進みます。ダンロップの経営権を欧州と北米ではグッドイヤーが、日本では住友ゴムが主導権を握ることになります。
2003年オーツタイヤ(ファルケン)を吸収合併。2005年ダンロップファルケンタイヤ設立、2010年住友ゴム工業に統合。国内ではダンロップ、ファルケン、グッドイヤーの3つのブランドタイヤを製造することに。そして2015年、米国グッドイヤー社とタイヤ事業におけるアライアンスを解消。
ダンロップの国内展開は住友ゴムが継続
住友ゴムと米国グッドイヤーがアライアンス契約および合弁事業の解消について合意、2015年6月4日付けで正式に発表。双方とも世界戦略で異なる方向へ大きく舵を切ることになりました。
住友ゴムにとっては欧米での買収や設備投資などで資金負担が重くのしかかる。またシェア拡大を目指す上でも、世界3大メーカーの一角であるグッドイヤーは魅力的な相手だったはず。
しかし解消の言い出しっぺはグッドイヤー、「住友ゴムが反競争的な行為を・・」と主張し提携解消を申し入れ司法へ訴えを起こしたのです。対して住友ゴムは「見解の相違!」と真っ向から反論。恐らくダンロップブランドの覇権争いと見られています。
当時、住友ゴムがダンロップブランドを使用出来ない地域ではファルケンなどを展開。これがグッドイヤー主導のダンロップと競合することに。提携維持のメリットよりも競争によるマイナスが濃くなった、というのが理由では。
解消前の2014年世界シェアは、米グッドイヤーが9.1%で3位、一方住友ゴムは3.8%で6位。15年前の魅力、思惑が外れて来ている、そう考えます。
解消で最も注目されるのはダンロップブランド使用の線引きです。公式に発表された内容は以下の通り。
【住友ゴム】
・日本の市販・新車用タイヤ
・北米(カナダ・メキシコ含む)の日系自動車メーカー向け新車用タイヤと2輪用タイヤ全般
・ロシア・CIS諸国、トルコを含む中近東およびアフリカ諸国等の33カ国
【グッドイヤー】
・北米(カナダ・メキシコ含む)の市販タイヤ、非日系自動車メーカー向け新車用タイヤ
・欧州諸国の市販・新車用タイヤ
新たな展開では目指す方向性も示されました。住友ゴムはファルケンなどを重要ブランドに格上げ。またグッドイヤーは早急なラインアップの変革は控えつつも、米グッドイヤーの特色を少しずつ強調すると発していました。
住友ゴム
社名は住友ゴム工業株式会社、本社所在地:兵庫県神戸市・東京本社:東京都江東区、創業は1909年。2022年の世界シェアは5位(3.8%)、国内ではブリヂストンに次いで2位です。
ダンロップタイヤ性能比較
スポーツ
ダンロップのスポーツタイヤは、「DIREZZA(ディレッツァ)」シリーズと「SP SPORT MAXX(エスピースポーツマックス)」シリーズがラインアップされています。スパルタン(厳格さ)を主張する市販タイヤとしての追求に拘るのが「DIREZZA」。対して「SP SPORT MAXX」は世界の高性能車への純正装着を目指す意向を打ち出しています。
ここでは「DIREZZA」を中心に。その歴史は2003年3月登場の「DIREZZA DZ101」から。以前は「FORMULA」がその役割を果たし、約20年以上に渡りダンロップのスポーツタイヤを支えて来ました。そして一つの時代を終え、新世代のスポーツブランドとして「DIREZZA」が投入されました。
「DIREZZA」は造語、DIRECT(英語:支配する)+BREZZA(イタリア語:風)からなり、「疾風を支配する」意味だという。
2017年登場の「DIREZZA ZⅢ」が最新。謳うのは、DIREZZA史上最速のストリートラジアルがさらに進化。そしてライバルはPOTENZA、ADVAN。ドライグリップの頂上戦争に更なる拍車が掛かります。ユーザーにとってはウェルカム、ワクワクします。
フラッグシップとなる「SP SPORT MAXX」シリーズの最新作。ハイパワーかつハイトルクなウルトラハイパフォーマンスカーの性能を最大限引き出すために、高速安定性能・コーナリング性能・ウエット性能を向上させたフラッグシップ。
従来品は「DIREZZA ZⅡ★」であり更なる戦闘力の向上、と言っていい。謳うのはDIREZZA史上最速のストリートラジアルがさらに進化! サーキットでは連続周回時の最速LAPタイムを1.6%、平均LAPタイムを1.5%短縮。
DZ102専用コンパウンド と 新パターン を採用、従来品よりドライブレーキ性能3%、ウェットブレーキ性能5%向上。セカンドブロックを一体化させた 新パターン と剛性を高めた 新構造 の採用で騒音エネルギー26%低減。
プレミアムコンフォート
主張は高い静粛性能と操縦安定性、最上級の快適な車内空間を実現すること。更に最高レベルのウェット性能維持。新たなコンセプトSMART TYRE CONCEPT技術を搭載したプレミアムコンフォートの実現を訴える。
コンフォート
「LE MANS V」の後継。低車外音タイヤにも適合。乗り心地の拘りとウェット性能を強化し、全ての分野でハイレベルを目指す。要はバランスに優れたコンフォート上位を印象付ける製品であることは間違いない。全サイズで「AA/b」を実現。
ドライとウェット、そして低燃費は従来を維持し、乗り心地と静粛性を大幅に高め、耐偏摩耗性能も向上。サイレントコア(特殊吸音スポンジ)を継承、プラスして今回新たに SHINOBIテクノロジー 採用。目線のブレなく静かに走る忍者のイメージ。
ラベリング制度の最高グレーディング「AAA/a」維持は当然とし、従来よりもウェットグリップ性能の低下半減を謳う。従来品「NEXTⅡ」の10%低下に対して「NEXTⅢ」は5%低下に抑える。これにより半減が根拠付けされることに。
ミニバン
ダンロップのミニバンタイヤ、最新は2019年6月発売の「エナセーブ RV505」です。「RV504」が進化、風や重さにふんばりが効く ふらつきにくく快適 が主張点。FUNBARI TECHNOLOGYの効果で耐ふらつき性能19%向上、耐偏摩耗性能53%向上を主張。
起点は「LE MANS RV」です。この時はミニバンではなくRV車用としての括り。2000年の「LE MANS RV RV501」を経て2005年に「LE MANS RV RV502」、この時もまだ新世代RV専用としての括りです。
そしていよいよ「エナセーブ」へ進化します。2009年の「エナセーブ RV503」は翌2010年から導入される低燃費タイヤを意識したもの。従来に比較し転がり抵抗を約20%低減。ただ初期段階の低燃費タイヤに見られたウェット性能に対する不安が払拭出来ていなかった。
2013年には「エナセーブ RV503★」が投入されます。ラベリング制度のウェットグリップ性能がそれまでの「c」から「b」へとアップグレード。そして2015年「エナセーブ RV504」へ。「エナセーブ」シリーズそのものが第2世代に入りました。
「エナセーブ RV505」はコンフォートスタンダードで最大性能を主張します。
「エナセーブ RV504」が進化、「エナセーブ RV505」として新たに投入。風や重さにふんばりが効く ふらつきにくく快適 が主張点。新開発の FUNBARI TECHNOLOGY(ふんばりテクノロジー)の効果で耐ふらつき性能19%向上、耐偏摩耗性能53%向上。
スタンダード
耐偏摩耗性能16%と耐摩耗性能4%の向上を謳い従来の長持ちから更に発展性を持たせたトータルライフへ進化。ラベリング制度は全サイズで転がり抵抗係数「AA」、ウェットグリップ性能「c」を実現。エナセーブ「EC」シリーズの熟成を極める。
SUV
フラッグシップ「SP SPORT MAXX 050+」のSUV専用。ハイパフォーマンスカー、特にプレミアムSUVのインポートカー(輸入車)をターゲットに高い操縦安定性能と優れたウェット性能を兼ね備え、高重心のSUVに最適化した専用構造を採用。
オンロードでの走行性能と快適性能を追求、街乗りニーズの高まりを受け、高荷重、高重心なSUVに求められる操縦安定性能を12%向上したという自信作。ただ今回も低燃費タイヤとはならず‥ 従来品は「GRANDTREK PT3」。
新パターン と サイドウォール部を均一にたわませることの出来る 真円プロファイル を採用。SUV専用低発熱密着ゴム との効果でウェット性能6%向上、転がり抵抗11%低減、耐摩耗性能35%向上。従来を大きく上回る性能。
4×4
待望の進化を果たした「AT5」。摩耗しやすいショルダー部の剛性を高めた新パターン、接地圧を均一化した専用プロファイルを採用。圧のかかりやすいショルダー部の摩耗エネルギーを低減、従来品以上のロングライフを実現。