アジアンタイヤで絶対的なグリップ性能に優れているスポーツ、その追求に変化は見当たらず。トレッド面は幅広の溝が刻まれ、一定面積を確保したブロックがスパルタンな雰囲気を漂わせています。いかにも! と思わせるのがアジアンスポーツタイヤの特徴です。
グリップ性能の拘りは方向性により多少の違いがあるけれど、評価レベルは明らかに向上していると感じます。これまではやや過小に捉えられがち、でも実際に経験すると印象が覆えされることもあるんです。
ウェット性能も同様。従来弱点のような捉え方があったけれど、日常的な街乗りでは十分という評価が今や多数を占めるほどです。
装着はミニバンなどでも珍しいことではありません。剛性の高さは懐の深さとして、カテゴリー横断へ期待を背負います。器用さとして評価されています。
それでも全体的にはやや大味なところもあるのかな。静粛性や乗り心地はスポーツタイヤとして重要視されなかった点ながら、繊細さという点で追求レベルがもう少し高まると新たな次元が見えて来そうです。
ラインアップはドライグリップへ傾向
アジアンタイヤメーカーにとって、スポーツカテゴリーへの投入は露出拡大への近道です。そこへ拘る姿勢は注目の度合いを高め、他との共存でも可能性の高まりが期待出来ます。これにより多くのラインアップを実現し、選択肢の広がりが魅力あるカテゴリーを構築します。ただ一方でカテゴリー内の性能差が大きくなっている印象もあります。
NANKANG「NS-2R」は過激。Sタイヤでは、と思わせるスパルタンさはドライグリップの優越感を強烈に示しました。この流れ止まりません。NANKANG「AR-1」がダメ押しだと思っていたらそれを超える?「CR-S」が更に投入されました。
一方で従来から続く人気製品がNANKANG「NS-2」、フォロー範囲拡大でカテゴリー横断による器用さを主張。メインのひとつとして変わらず維持します。
DAVANTIからはハイレベルなスポーツへの主張が響く「PROTOURA SPORT」、そして2023年「PROTOURA RACE」を投入。ドライグリップに拘る姿勢を強調し本気の姿勢を示します。
NITTOをアジアンタイヤに括る違和感もようやく受け入れられ、全体的な底上げが更に進みます。その中で「NT555 G2」はメイン市場北米で認知された製品です。
FINALISTは唯一の製品が「595EVO」。実はFEDERAL「595EVO」との関連性が深い。国内においてFEDERAL「595EVO」銘柄は既にフェードアウト。この結果、FINALISTへ引き継がれていると考えます。
FEDERALの新たなスポーツモデル、それが「EVOLUZION」シリーズ。バランス性能の高さを誇り最上位モデル「EVOLUZION F60」を投入。またストリートユーザーに向けた「EVOLUZION ST-1」も注目です。
最後に触れるのがCEAT。国内初投入?のスポーツタイヤです。主張によると、ショルダー剛性を高め安定性を向上、負荷のかかる高速域でもエネルギーのロスは最小限。コーナリングのコントロール性が高く‥ 文言だけなら正にこのカテゴリーにジャストフィット。インドメーカーの可能性を強調します。
モータースポーツ参戦で主張を高める!
アジアンタイヤメーカーによるモータースポーツへの参戦は、珍しいものではなくなりました。特にドリフト関係、D1などへは性能を訴えるのに絶好の場として積極性を示します。
当初使用されるタイヤは市販の公道用に限定され、いわゆる街中で使用する製品が装着されていました。ただ規定の変更で一般的、とは言い難くなっていますが‥ 現在はコンペティションの括りを敢えて設定しより過激な製品を投入します。それでもレース結果はメーカー・ブランドに直結。北米や欧州、そしてアジア諸国でも同様の捉え方になるかと。
ドリフトに比較してグリップのレースは今後への課題。恐らくだけれど耐久性に対する課題が見えてきます。それでもレース専用、というかコンペティションブランドの構築に大きな影響を与えています。過去、国内メーカーの戦略がそうであったようにレースで勝つことがファンを獲得する、これを実践している訳です。
ということで、近年盛り上がるアジアンタイヤメーカーによるモータースポーツの意義は大きいと考えます。今シーズンも活発化したシーンを見る機会が多そうです。
アジアンスポーツタイヤ性能比較
NANKANG
「CR-S」はタイムアタック、サーキット競技などのクラブユーザー向けに専用設計されたという。TREADWEARは200のエクストリームパフォーマンス。NANKANGが誇る最高のスポーツタイヤ‥
ドライグリップに拘る姿勢は本物。性能を極限まで高めたハイグリップとして、サーキットやスポーツ走行で気合を入れたいユーザーへ向けられている。ラップタイム向上などより速く、より洗練されたタイヤを実現。
従来品となる「NS-2」とは全くの別物では。見た目のスパルタンさはSタイヤに通ずるような風格さえあり、R の称号がこれまで以上に走りに特化した、いわゆるハイグリップへ進化していることを物語る。走りに特化した仕上がりだ。
パターンは一昔前の国産スポーツタイヤに共通点を感じさせる。街中走行でも安定した走り、サイズバリエーションは豊富。軽カーからコンパクトカー、セダンやミニバンまで幅広くフォロー。NANKANGラインアップで継続した人気を誇る。
CEAT
国内初投入になるCEATのスポーツタイヤ。ショルダー剛性を高め安定性を向上、負荷のかかる高速域でもエネルギーのロスは最小限。コーナリングのコントロール性が高く、安定感のある走りを実現するという。
DAVANTI
「PROTOURA SPORT」との圧倒的な違いはトレッドパターン。ブロックの面積を可能な限り大きくセミスリックに寄せた設計。これによりドライグリップの更なる高みを果たす。ストリートの日常使いでも不満が無い‥
ハイレベルなスポーツへの主張が響くデザイン。トレッドデザインは独自性を謳いつつも「DX640」の流れを汲む。違いは溝とブロック面の割合、そうシーランド比が小さくなっている、スポーツ系にとっては重要。
RADAR
性能指針はウェットと高速性能において、10段階の9レベル。乗り心地、静粛性、燃費性能は同8レベルを獲得。性能全般でハイクオリティーを実現し、プレミアムパフォーマンスとしての高性能さを主張
MAXTREK
サーキット走行でも搭載性能を遺憾なく発揮。採用したのはVシェイプのトレッドデザイン。見た目のインパクトは強烈。ドライグリップを主張するピュアスポーツに括る捉え方が適している。ドライは勿論ウェットにおいても安定性を得る。
NITTO
最新テクノロジーにより独特のパターンデザインに優れた機能性が示されている。左右非対称パターンは、IN側はツインワイルドグルーブの採用、OUT側はラージブロックを採用しウェット性能への得意性を強調。
特徴的で拘りの左右非対称パターン採用のスポーツタイヤ。そのトレッド面のブーメランのような変則的な形態は3次元の流れを形成し、個々のブロックによる働きが大きな期待感と共に斬新さを強烈に印象付ける。
従来品「NT555」の後継。高出力ハイエンドカーに対応し、ハイパワーを路面にしっかり伝えながらも、転がり抵抗とウェットグリップを高次元で両立した製品。メイン市場となる北米で先行、国内へも待望の導入が実現した。
FINALIST
新たなFINALISTの牽引役として異なるイメージを完全定着。その結果、スポーツパフォーマンスに優れる「595RS-R」「595RS-RR」にも迫る斬新で高位の位置付けを確立。「595」シリーズの特性であるファイヤーパターンも健在。
FEDERAL
アグレッシブなパフォーマンスを実現する高性能ストリート。従来品が「595RS-RR」。その前が「595RS-R」という進化を辿る。炎を彷彿させるファイヤーパターンで武装し、FEDERALの最新技術を結集した最強のハイグリップタイヤを受け継ぐ。
「595RS-R」の進化。日本各地のサーキットでテストを繰り返し次世代製品として誕生した。伝統の 炎 を彷彿させるファイヤーパターンは、FEDERALの最新技術を結集した史上最強ハイグリップタイヤであることを意味する。
特徴は鋭角な複数のV字型で構成されたトレッドパターン。これにより高い排水性とグリップ性能を実現。またハンドリング性能を向上させレスポンスの良さを主張。これにより高速走行など厳しい環境でもハイパフォーマンスの実現を謳う。
「595」シリーズはピュアスポーツに配置。「EVOLUZION」シリーズはプレミアムスポーツに寄せた捉え方。トータルでの性能向上、要はバランス性能の高さを誇る。これによりスポーツカテゴリーの線引きが可能。
「EVOLUZION」シリーズの基本形を主張。スポーツタイヤの標準性能を有しつつ高次元でバランスを図る。「SS595」の後継として扱い易さが魅力。ドライ、ウェットにおいて優れたハンドリング性能などは踏襲される。